前半はこちら→ジェンティルドンナ物語 【前編】
第五章:歴史に刻まれた叩き合い【牝馬三冠達成とジャパンカップの衝撃】
2012年10月14日、京都競馬場。
ジェンティルドンナは史上4頭目の牝馬三冠を懸け、秋華賞のゲートに立っていた。
ここまで桜花賞とオークスを圧勝し、ファンの期待は「三冠達成」に一点集中していた。単勝オッズは1.3倍の圧倒的1番人気。
しかし、レースでは不穏な空気があった。
- 返し馬の最中、スタンドの大歓声に驚いて鞍上を振り落とす
- スタート直後、前が詰まって位置取りが悪くなる
- 3コーナーからペースが上がり、外から一気に仕掛けられる展開
そして迎えた直線。
ジェンティルドンナの前には、ヴィルシーナ。
オークスでも2着に敗れたライバルが、今度こそ逆転しようと必死に粘る。
このレースは、競馬史に残る「叩き合い」だった。

あの秋華賞の叩き合いって、どっちが勝ってもおかしくなかったよね?



そうだな。直線で一度はヴィルシーナに前に出られたが、ジェンティルドンナが”差し返した”んだ。



でも、その差は……?



ハナ差。わずか7センチだった。



えええええ!? 7センチの差で、三冠が決まったの?



そういうことだ。ヴィルシーナも本当に強かったが、ジェンティルドンナの”負けん気”が上回ったんだろうな。
こうして、ジェンティルドンナは史上4頭目の牝馬三冠馬となった。
しかし――彼女の伝説は、ここで終わらない。
この年、彼女は「世界最強馬」との対決に挑むことになる。
その相手の名は――オルフェーヴル。
第六章:オルフェーヴルとの戦い【三冠馬対決】
2012年11月25日。
秋華賞の激戦から1ヶ月後、ジェンティルドンナはジャパンカップに出走した。
そこには、前年の三冠馬であり、世界の大舞台・凱旋門賞で2着に入った最強牡馬、オルフェーヴルがいた。
「三冠馬 vs 三冠馬」
この一戦は、まさに歴史的一戦だった。
レースは、ジェンティルドンナが3番手、オルフェーヴルが中団待機という形で進んでいく。
そして迎えた直線――。
ジェンティルドンナとオルフェーヴルが馬体をぶつけ合い、激しく火花を散らした。
最後の50m。
2頭の脚色はほぼ同じ。
ゴール板を駆け抜けた瞬間――。



このレース、すごすぎて鳥肌立ったよ……



ああ、ジャパンカップ史上、最も白熱した一戦と言われている。



で、結果は……?



ジェンティルドンナ、ハナ差勝ち。



えっ、秋華賞と同じ!?



そうだ。ハナの差で三冠を獲り、またハナの差で日本最強馬を撃破したんだ。



すごい……この馬、“勝つこと”を知ってるんだね。
こうして、ジェンティルドンナは史上初の「3歳牝馬によるジャパンカップ制覇」を成し遂げた。
この年、彼女は「年度代表馬」に選ばれた。
しかし――彼女の伝説は、まだ終わらない。
第七章:世界へ【海外遠征とジャパンカップ連覇の偉業】
2013年。
4歳になったジェンティルドンナは、新たな挑戦へと向かう。
目標は「世界の頂点」。
その第一歩として、彼女は春にドバイへ遠征し、世界の強豪と戦うことになった。
出走レースはドバイシーマクラシック。
日本の競馬ファンは、ジェンティルドンナが世界の馬とどこまで戦えるのか――固唾を呑んで見守っていた。
しかし、結果は「2着」。
勝ったのは、ヨーロッパの名馬セントニコラスアビーだった。



えっ、負けちゃったの?



ああ。でも、これは”負けた”というより”経験を積んだ”という方が正しいな。



どういうこと?



ジェンティルドンナは、ここで”海外の競馬”を学んだんだ。日本とはペースも馬場も違う。でも、この経験が、後にとんでもない快挙に繋がることになる。
そして、秋――。
ジェンティルドンナはジャパンカップ連覇に挑んだ。
しかし、ここで衝撃の決断が下される。
「主戦の岩田騎手を降ろし、ライアン・ムーア騎手を起用」
岩田騎手はショックを受け、「俺のジェンティル……」と呟いたという逸話が残っている。
そして迎えたジャパンカップ。
ジェンティルドンナは、前年とは異なり、スローペースの展開を冷静に見極め、直線で抜け出すと、そのまま押し切った。
史上初の「ジャパンカップ連覇」――。
彼女は、またしても競馬史に新たな1ページを刻んだ。
最終章:伝説の終幕【そして未来へ】
2014年。
5歳になったジェンティルドンナは、再びドバイに挑戦した。
そして――彼女は勝った。
前回2着に敗れたドバイシーマクラシックで、見事に雪辱を果たし、日本調教馬として2頭目のドバイ制覇を成し遂げたんだ。
しかしその後、彼女は苦難の時期をむかえる。
- 宝塚記念 9着
- 天皇賞(秋) 2着
- ジャパンカップ 4着



なかなか勝ちきれない時期があったんだね…



そうだ。なかには「ジェンティルドンナは終わった」と報じたメディアもあったそうだ。。
そして、日本競馬のクライマックス、有馬記念に出走。
そこで――。



えっ……有馬記念、勝ったの!?



勝った。しかも、これがラストランだった。



うわあああああ!!!



そして――ある馬の”記録”に並んだんだ。



ある馬……?



それは、また別の話だな。
つづく
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